開け放った窓から入ってくる風が足の甲を撫でる。
少なくなったセミの声はどこか物悲しく、夏の終わりの感覚を引き出すことを知る。

朝食をとった後、美保神社で毎朝行われているという神事を見た。


祝詞をあげ、神楽を舞う。

風に揺られ、巫女の白い着物の袖が舞い上がる。

重なり合う声が意識を非二元の世界へと誘う。


雨の日も雪の日も、誰が見ていても見ていなくて、毎日こんな神事が行われていることを思うと、日本という国に生まれ、その文化の中に身を置くことができたことに感謝の念が湧いてきた。

いろいろな国でいろいろな場所やお祭りを見てきたけれど、静寂と空のある時間がわたしにはとても心地いい。



日々を静かに過ごしたい。

日本滞在中はこれまで以上に移動や人に会うことも多い。今日をはさんだ一週間ほどは二日に一回は数時間の移動をし、滞在場所がどんどん変わっていく。他の国に滞在していたときの1ヶ月分くらい動くのではないだろうか。そんな中だから余計に、静けさや落ち着きが恋しくなっている。

幸いなことに現在の滞在先は漁港近くの古い家が改装された、こじんまりとしているが居心地のいい場所だ。せっかくだから晴れた空の下で海をもっと見たいと思っていたけれど、旅の途中の小休止には曇り空がちょうどいいかもしれない。

町の中や家の中に小泉八雲を紹介する資料が多くある。ギリシャ人で新聞記者だったという彼にの目に、日本はどんな風に移ったのだろうか。その感覚を追体験すべく、『日本の面影』を早速Kindleで購入した。

古いオーディオから流れるピアノの音を聞きながら、今日は少し早い秋の夜長のように、言葉の世界を漂うことになるだろう。2022.9.2 Fri Mihonoseki Japan